由利独自マネジメントシステム構築で
「カイゼン」のその先へ
豊岡のDNAが息づく革鞄をグローバルに展開
受け継がれた歴史、職人の技術を生かし
工業製品のような生産体制で丁寧なものづくりを追求。
海外でも評価が高い「豊岡らしい」鞄の魅力を発信している。
2022年取材
鞄づくり千年の歴史を有する兵庫県豊岡市の技術集団、由利では独自の管理システム「フィードバックサイクル・マネジメント」を構築。自社で一貫して行う修理・企画・製造など、7つの工程をフィードバックし合い補完。ものづくりのプロセスをトータルでとらえ改良を重ねることで、製品設計、品質向上、材料の有効活用へとつなげている。
なかでも修理に注力。通常の製品の三倍もの労力をかけ、地道な積み重ねにより、修理に対するイメージを向上させた。現在では月300~350本もの鞄をコンスタントに手がけ、その理由・原因を解明し製品づくりに反映。同社代表取締役社長 由利 昇三郎さんは「リペアは究極のSDGs」と真摯に向き合う。
その企業理念は同社のビジョンのひとつ、「進化する鞄創造ブランド」にも象徴される。創業当初はスキーバッグやガーメントケースが売れ筋だったそうだが、ロングセラーをよりよく進化させて完成度を高めていくのが身上だ。定番製品でも二年ごとに見直し、ディテールを微調整。時代の空気、ニーズの変化を見逃さない。
定番製品であるダレスバッグは希少性、技術力、クオリティが海外でも高く評価されている。ファスナーよりも開きやすく、大きく開くため、内部を見やすく荷物が取り出しやすい。大きく開ける際のプライバシー保全や盗難防止の観点から、ジェンダーや世代によって異なるニーズに対し、開口部の仕様をチューニングしている。
軽量化し自立することも重視。自宅のインテリアに馴染むことを理想とする同社の鞄は洗練されたデザインが特徴。アート感覚、オブジェ感覚でひとりひとりのライフスタイルに溶け込む。豊岡鞄のオリジン、柳行李のような「用の美」を備えながらも、新しい日常生活のさまざまなシーンを多彩な表情で彩る。
オリジナルブランド「Atelier nuu」ではレディスバッグ領域にチャレンジ。鞄の口枠などのディテールやレトロなデザインを取り入れたシンプルなコレクションが幅広い世代に人気。トレンドと一定の距離感を保ちながらも、カラーバリエーションなどでそのときどきの時代性を表現している。
キャッシュレス決済の浸透と持ち物の変化によるミニバッグへの底堅いニーズに合わせ、小さめサイズのダレスバッグを発表予定。大阪・南船場にショップのオープン。ECサイトでは伝えきれないレザーの色合い・風合いを確かめることができるスペースを開設し、ジャパンレザーファンの想いに寄り添う。