カナメ東京を代表するタンニン鞣しタンナー
生き残った使命を
革づくりの情熱に変えて
東京都23区内でタンニン鞣しレザーを手がけるタンナーをご存じだろうか?
環境への意識が高まる時代に対応しながら、匠の技を研ぎ澄まし
日本国内はもとより、アジアから注目を集めている。
2022年取材
東京スカイツリーのおひざもと、東京都墨田区は古くから皮革産業が盛ん。隅田川、荒川といった大きな河川に挟まれた土地柄を生かし、その歴史を受け継いでいるが、タンナーは減少傾向にある。
さまざまな業種の工場が軒を連ねていたこの地域は都心に近いことから宅地化が進行。廃業した工場跡地が次々と大規模集合住宅となるなか、数々の配慮を重ね地域住民と共存。誠実に都市型タンナーとしての新境地を切り拓く。
「東京でヌメ革といえば、弊社といっていただいています。時代の変化のなか、生き残った責任、使命として、タンニン鞣しの魅力を伝えたい。革職人の技術は事業を継続していかなければと残すことができないんです。弊社のファクトリーがある東墨田では周囲の事業者とともに工業団地の構想もあり、ピンチがチャンスとなるよう、革づくりを守っていきます」とカナメ専務取締役 佐久間勇さん。
アジアでも数えるほどとなってしまった、タンニン鞣しレザーのタンナー。熟練の職人による匠の技が独自のクオリティーを実現。人に例えるとメイクの力に頼らずに輝く素肌のような自然な艶、透明感、美しい色合いもまた独特だ。「一枚一枚丁寧に手塗りを施し、昔ながらの手法で染め上げています。顔料を一切使用しない、革本来の風合いや経年変化を五感で感じてください」(佐久間さん)。
ユーザーに人気の「レトロ」ムーブメントは、エイジングを楽しめるレザーには追い風。「東京レザーフェア」出展時には、専門学校生や若手クリエイターが同社のブースに立ち寄り、目を輝かせていた。
アンティーク調の染色、グレージング、クラッキング加工をはじめとしたヴィンテージ調のニュアンスも得意だ。連携する薬品関連企業のサポート体制により、多彩な表面感を表現。詳細なレシピを記録・管理しデータベース化。そのアーカイブから再現可能。レザーの個体差に合わせ調整し多品種少量生産にも応える。
海外展示会出展後、経済成長が著しいアジア各国から発注が絶えない。オーダー通りに仕上げる、納期を守る、といったビジネスマナーが根づく日本人の国民性が他国との差別化につながっている。国内産の原皮、特に入手が困難な北海道の乳用牛、フォルスタイン原皮を使用したメイドイントーキョーのレザーも強み。「北海道」「東京」はアジアで認知度が高く、地名がブランド価値をもつ。
国内においては、取引先との物理的な距離感が近いことが大きなメリット。都内のみの移動で完結するのも、いまの時代にマッチしている。仕上がりの調整がしやすく多忙なクリエイター、ファッション業界関係者から好評だ。
同社ショールームは、浅草と東京スカイツリーの中間くらいに位置し、近隣にはパワースポット三囲神社やメディアで紹介されることが多いカフェなどもあり散歩コースとして人気。予約制(電話でのアポイントが必須)で若手クリエイターや一般ユーザーにも対応している。カナメならではの色合い風合いを体感してみては。